2005年05月12日

異国トーキョー漂流記

4087477924異国トーキョー漂流記
高野 秀行

集英社 2005-02
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辺境冒険作家、高野秀行の最新作は、「トーキョー」で出会った外国人 8 名との交流を描いた文庫書き下ろし版。海外放浪生活が長い著者のこと、今までは海外で外国人に出会う話が多かったわけだが、今度はトーキョーで外国人をお世話した話である。

歴史も文化も何もかもが違う国からやって来た外国人から見た東京は驚きに満ちており、そして彼らと一緒に東京を俯瞰して見ることで、東京はいつもと違うトーキョーに見える。普段見慣れた街並みも、ちょっと見る角度を変えただけで何もかも変わって見えると著者は言う。なかなか含蓄があっておもしろい感覚だと思う。

本書に収められている八編はそれぞれに面白いが、特に最後のスーダン人留学生の話は特に印象深い。スーダンからやって来たマフディは視覚障害者。目が見えず、正に見たこともないのに日本のプロ野球が大好きで、広島カープの熱狂的なファン。そんなマフディのために著者は彼を東京ドームに連れて行く。観客のざわめき、ボールがグラブにおさまる音、バットから発する甲高い打撃音。ラジオを持ってくるのを忘れてしまったので、著者はラジオの野球放送さながらに一つ一つのプレイを実況する。初めて実感するスタジアムの雰囲気に興奮するマフディ。野球好きのくせにまだ一度も野球のボールを触ったことがないというマフディに、いつかボールを触らせてあげて、そしてストレートやカーブやフォークの握りを教えてあげたい。本書の帯には「愉快でカルチャー・ショックに満ちた 8 つの胸キュン友情物語」と書いてあって、読む前は今どき「胸キュン」もないだろうと思ったのだけど、こういうのもありかも、と読後にちょっとだけ思ったり。

そういえば私も間もなく日本を離れ、しばらくは海の外で暮らすことになる。何年かたって日本に帰ってきたときに、はたして東京や横浜は、トーキョー、ヨコハマと感じることになるんだろうか。

ちなみに作者の blog によると、本作がブックストア・浜松町店で週間売り上げベスト・ワンに躍り出たそうだ。猛烈にローカルなランキングではあるものの、こういう面白い本が売れているという状況は大変喜ばしい。是非ともバンバン本を売って、その印税でまたどこかの辺境に赴いてもらい、今後も楽しい本を書いてもらいたいものだ。

Posted by hamada at 2005年05月12日 23:54 | TrackBack
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