2005年12月30日

「血液魚雷」

4152086726血液魚雷
町井 登志夫

早川書房 2005-09-22
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先日の日本出張の時に読了。忘れないうちに感想を。

本文はひとまず置いておいて、とにかく最初に目がいくのが帯タタキ(カバー帯)にデカデカと書かれている「このミステリーがすごい!大賞落選作品」というコピー。普通、本として出版されるのは受賞作なのだろうけど、敢えてこういうコピーを付けたあたりに「本当はこれが受賞作なんじゃないのか」という、ある種アンチテーゼ的な趣旨がうかがえる。しかし読み進めてみると、やはりこれは大賞落選作もむべなるかな、という感じの作品ではある。

内容は、血管の中を魚雷のように動き回る謎の病原体と、それをなんとか退治しようとする医師たちを描いたメディカル・ホラー。医師たちは「アシモフ」といわれるカテーテルの先に超高性能三次元カメラ装置をとりつけて病原体を追い回す。しかし病原体の動きは正に魚雷のごとく速く、その航路は予測不能。はたして彼らは病原体に打ち勝つことはできるのか、そして病原体の正体とは?

この「アシモフ」という装置がなかなか面白い。ゴーグルをかけると目の前には血管の中の映像がバーチャルリアリティで広がり、目前には白血球やマクロファージがウネウネと動き回る様が投影される。まるで潜水艦に乗って血管の中を進んでいるような感じなわけだ。アシモフの由来はもちろん SF 作家のアイザック・アシモフ。あの「ミクロの決死圏」では人間の乗った潜水艦をミクロ化して血管内に送り込むという、正に SF ならではの力技的アイデアだったが、こちらは血管内カテーテルと高性能カメラ、そして高度な画像処理による仮想現実という、現有のテクノロジを組み合わせて頑張ればなんとか実現可能な気がする「現代版ミクロの決死圏」という感じか。

「アシモフ」のアイデアはなかなか良いと思うのだけど、しかし肝心のストーリーがそのアイデアを今ひとつ生かし切れていない気がする。とにかくほとんどの場面描写が「アシモフ」を使った検査シーンに尽くされていて、しかもそれが、「アシモフ」で病原体をハケーン! → 動きが速すぎて見失いました! → あっ、今度はあんなところに! → また見失ってショボーン の繰り返しばかり。ただ病原体の動向に一喜一憂しているだけで、さすがに何度もこんなのばかりだと、いい加減ダレる。場面は病院、登場人物はほとんど医師だけ、そして患者は主人公の元彼の妻とくれば、医師同士のドロドロした確執や人間関係などのサイドストーリーを盛り込めば、もう少し物語りがふくらんでくるように思えるのだが。なんとも惜しい、という作品。

Posted by hamada at 2005年12月30日 23:25
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