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「大西洋漂流 76 日間」

2006.12.25 23:57 CST [ 読書感想 ]

大西洋漂流76日間大西洋漂流76日間
スティーヴン キャラハン Steven Callahan 長辻 象平

早川書房 1999-05
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極限状態に置かれた人間は、はたして何を考え、どういう行動を取るのか。事故、病気、戦争など、極限的かつ危機的状況にもさまざまあるが、そういった環境下で人は何をすべきなのだろう。非常に興味がある。本書は大西洋上でヨットが沈没、救命ボートで76日間漂流し、生還したという、正に極限の局地におかれた人間のノンフィクション。

ゴム製の小さな救命ボートで、月明かりも無く、大波が押し寄せる漆黒の大海原をたった一人で漂う。今までエンデュアランス号漂流記やコン・ティキ号探検記、無人島に生きる 16 人など、いわゆる「漂流もの」は何冊か読んだことがあるが、それらの本での各人が置かれた状況は、困難に陥りながらも仲間たちと励ましあうことのできるものであった。しかし本書の「漂流」はたったの一人。飢餓、足りない水、ボートの故障、鮫の襲来。次から次へと起こる問題を全て一人で解決しなくてはならない。ただこれだけ書いてみても、想像するだけで恐怖が押し寄せてくる。本書には「遭難者の 90% が三日以内に死ぬ」という記述があるが、それは物理的な要因ではなく、孤独と恐怖に絶えかねて精神的にまいってしまって、絶望してしまうらしい。それもさもありなんと思えてくる。

しかし筆者は慢性的な飢餓と絶望感、孤独感の中で常に体を動かし続け、問題をひとつひとつ解決し、困難な状況を乗り切る。正に鋼のような精神力だが、一方で救命ボートに寄り添うシイラをモリで突き、食料とする際に、シイラを殺したことで著者は罪悪感に苛まれる。魚を殺して喰わなければ自分が死んでしまう。だがそれは、この大海原で自由に生きる一つの命を奪い去ってしまうことになる。絶望的な飢餓状態でありながら、どうしてこのような感情を抱けるのか。

まあ暖房がバッチリ効いた暖かい部屋で、ソファーに寝ころびながら本を読む人間に、筆者が置かれた状況や心理を完全に理解出来るわけもない。それでも本書が教えてくれる一つの真理は、「生き続けるためには決してあきらめないこと」である。もっとも実際にこんな状況に自分が置かれて、その真理を実行できる自信は全くないわけだが。

投稿者 hamada : 2006.12.25 23:57 CST

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