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「舞姫(テレプシコーラ) 10」 山岸涼子

2007.02.02 23:21 CST [ 読書感想 ]

舞姫(テレプシコーラ) 10 (10)舞姫(テレプシコーラ) 10 (10)
山岸 凉子

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山岸涼子の長編バレエ漫画。本巻にて第一部完結。

持って生まれた才能を下地に、正に血のにじむような日々の努力と訓練によって精神と肉体の能力を極限まで高めても、さらにその先に到達できるのはほんの一握りの人間でしかないのがバレエという芸術。それも年端もいかない幼い頃から厳しい練習を始め、遊びたい盛りの思春期も、様々なものを犠牲にして打ち込まなければ高みには登れない。

ダンサーとしての才能、容姿、知力と、およそ神に選ばれしもの全てを持ち、さらに高い目標を自らに課し、自らを厳しく律した努力によってそれをクリアすることの出来た少女。誰もが彼女は一握りの「高み」に登ることのできる人間であると思っていた。しかし、たった一度の偶然とそれに続く不運が、彼女から全てを奪ってしまう。そしてその先に待つ悲劇。話の流れとして、もしかしたら、とは思っていたが、現実にこういう結末になるとは。

そして対する妹は、一切の感傷を切り捨て、自分の中から湧き出てくる表現欲にただ徹することを選択する。以前彼女に対してダンスの先生がふと漏らした「彼女に足りない何か」。それを得るためにこれほどまで大きな代償が必要だったとは、正に皮肉としか言いようがない。しかし、その苦しい出来事を乗り越えた向こう側に行けば、こうまで大きく輝くことができる。プロフェッショナルなコリオグラファー(振り付け師)として、ダンサーとして、そして見る者の心を打つ表現者として、その「足りない何か」は絶対に必要な要素だった。情け容赦ないまでに残酷なストーリーではあるけれど、そこに込められているのは第一級のストーリーテラーたる作者の強烈なメッセージである。

私なぞが今さら言うことではないが、山岸涼子は本当に凄い。そして、恐ろしい。漫画を読んで鳥肌が立つなんて久々ですわ。

投稿者 hamada : 2007.02.02 23:21 CST

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