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「小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所」 秋本治、大沢在昌他

2007.06.21 23:48 CST [ 読書感想 ]

小説こちら葛飾区亀有公園前派出所小説こちら葛飾区亀有公園前派出所
大沢 在昌 秋本 治

集英社 2007-05-24
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週刊少年ジャンプに連載中の人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(以下こち亀)の連載 30 周年、および「日本推理作家協会」 60 周年を記念して、日本推理作家協会の作家 7 人が「こち亀」世界を小説として描くというコラボレート作品。

よく言えばお遊び企画、悪く言えばイロモノ作品ではあるのだが、それでもなにしろ参加している顔ぶれは豪華である。作品順でいくと大沢在昌、石田衣良、今野敏、柴田よしき、京極夏彦、逢坂剛、そして東野圭吾と、当代きっての売れっ子人気作家が作品を寄せているのだから凄い。それぞれ自分の小説に出てくるキャラクタと、“両さん”こと両津勘吉巡査を見事に絡ませ、きっちり「こち亀」の世界を演出させるあたりはさすがの実力者揃いである。しかし「新宿鮫」の鮫島警部と両さんが両さんの実家の佃煮屋の前で世間話をしたり、「池袋ウェストゲートパーク」のマコトが池袋の街を両さんと一緒に疾走したりなど、まあこんなことは普通なら絶対(でもないが)あり得ないわけだが、そういうシチュエーションが楽しめるのが本作の読みどころ。

七作のうち、特に印象深いのが、まずは今野敏の「キング・タイガー」。両さんに会ったこともない定年退職した警察官が、子供の頃憧れたプラモデル作りをしながら両さんと繋がっていくストーリー。模型屋に飾られた両さんが作ったプラモデルを目標に、奥さんに呆れられながらもコツコツがんばって戦車を作っていく姿が微笑ましい。最後の最後で登場する両さんのセリフには、読んでるこちらもつい涙腺がゆるむ思い。作者は実際に一級のプラモデル製作者だそうだが、本作にはプラモデルと「こち亀」に対する愛が詰まっている。

もうひとつは京極夏彦の「ぬらりひょんの褌」。他の作品が両さんを前面に出して、ある意味真っ向勝負でストーリーを作り上げているに対して、この話だけ両さんは実際には出てこない。話の進行も大原部長を使ってくるというマニアックさ。なんでも作者は「こち亀」全巻を所持し、精読している真性の「こち亀マニア」だそうだが、マイホームパパの寺井が家探しのおりに不動産屋によく騙されていたというエピソードを利用しているのも、さすがマニアというところ。本作の版元が集英社だから「南極夏彦」が出てくるというギャグも、いかにもらしい。そして妖怪ぬらりひょんを両さんになぞらえ、謎解きとして中野の古本屋の主人こと「あの人」が登場し、最後には「あの人」の言霊によってきっちり大原部長の憑き物落としをするなど、京極ワールドと「こち亀」の見事なコラボレーションには脱帽するしかない。特に京極堂シリーズが好きな人ならば、最後の最後の一行で間違いなく涙するはず。

ということで、一作一作が短めで若干物足りないような気がするが、「こち亀」ファン、それぞれの作家のファン、あるいは両方のファンであれば間違いなく楽しめる。おすすめ。

投稿者 hamada : 2007.06.21 23:48 CST

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