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「怪魚ウモッカ格闘記―インドへの道」高野秀行

2007.11.08 23:51 CST [ 読書感想 ]

怪魚ウモッカ格闘記―インドへの道 (集英社文庫 た 58-8)怪魚ウモッカ格闘記―インドへの道 (集英社文庫 た 58-8)
高野 秀行

集英社 2007-09-20
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日本を代表するメンタテインメント・ノンフィクション作家にして辺境冒険ライターの高野秀行の最新刊。トルコ奥地の湖に謎の巨大生物を探しに行ったと思ったら、次は怪魚である。舞台はインド。インド辺境の漁村付近に生息するという幻の怪魚を追った渾身のドキュメント作品。

著者曰く、昭和四十年前後に生まれた人々は、未知動物という響きに対して激しく反応する世代であるらしい。著者と私は全くの同世代。タイトルの「怪魚ウモッカ」という文字を見ただけで猛烈に身もだえしてしまった。しかし普通の人なら身もだえするだけで終わるのだが、著者はそこを一歩も二歩も、いや百歩も踏み越えるのである。

未確認不思議動物をテーマとするサイトで「ウモッカ」を見つけた著者は、いてもたってもいられなくなり、すぐさま行動に走る。かつてアフリカ・コンゴのジャングルに怪獣探しに行ったり、ミャンマーのゲリラ地帯でケシ栽培を手伝いながら数ヶ月過ごしたり、アマゾンの奥地に幻の幻覚剤を探し求め、中国の山奥に住む野人を捜した作者である。彼の禁断症状は、「何か探すものはないか」という体の奥底から突き上げる自然現象だ。そしてその標的が見つかるや否や、もうじっとしてられない。待っていられない。

しかしインドへの道、そしてウモッカへの道は、とにかく遠く、ひたすら険しい。いつもの探検、冒険行の例に漏れず、今回もこれでもかというほどに事態は予想だにしない展開を見せる。だがこれはまぎれもないノンフィクションである。正に小説より奇なることが現実に、それも山ほど起きてしまう。そののっぴきならない場面場面で、著者は熱い心と冷静な頭脳で立ち向かう。「格闘記」の格闘とは、こういう格闘だったのである。そしてあまりにも意外な結末。ううむ、こう来たか。

とまあ、予測不可能な冒険行と、それを「高野節」と呼ばれる独特の文体全開で、いつも通り最後まで一気に読了させる面白さである。

それにしても著者の本を読んでいつも感じるのは、不思議な連帯感と妙な感動である。著者の冒険譚は、おちゃらけの冒険ごっこでも単なるネタでもない。ただただ純粋に「まだ誰も見たことがないものを見てみたい」という欲求に突き動かされた結果での行動であり、そして極めて真面目でいつでもどこでも真剣に事に当たる。あくまでも著者は、怪獣や怪魚の発見捕獲という現実を見据え、持てる力の 100% を出し切って準備を行い対策を練る。そのパワーと熱さにはただただ圧倒させられ、単なる傍観者としての読者ではなく冒険の仲間としての身近さを感じ、諸手を挙げて応援したくなり、そして冒険の結果がどうであれ、読後には妙な達成感とともにある種不思議な感動を覚えるのである。これらを私は勝手に「高野マジック」と呼んでいるが、この感覚は著作を読んでもらえばきっとわかってもらえると思う。

まあ怪魚だの幻獣だの野人だの、はたから見れば馬鹿馬鹿しいことこの上ない。しかし世の中、こんな馬鹿が一人ぐらいいてもいいではないか。むしろ困る。私は大変困る。もしも高野本が読めなくなったとしたら、これほど不幸なことはない。なので著者にはどんどん世界の辺境に飛んで、探し物の冒険を続けてほしい。と無責任に応援する私である。

投稿者 hamada : 2007.11.08 23:51 CST

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