みくだり日記    2000年08月後半
最新のみくだり日記へ
08月31日(木)
  今年の夏はずいぶんと暑かった。だがここ数日は比較的湿度が低く、特に夜になると涼しい風が心地よかったりして、さすがにもう八月も終わり、やがて来る秋の気配を肌で感じていたのだった。ところが今日は午後から突然の雷雨。雷と共に地上に降りてきた湿気は、いまだ季節が交代していないことを強烈に主張する。暑い。

  ちょっと話題に出遅れてしまった感があるが、イリジウム衛星破壊の報は驚いた。採算が合わずに経営破綻し、携帯電話サービスも停止したのがずいぶん前で、果たして残された六十六個の衛星はどうなるものかと思っていたが、結局のところ軌道から外されて廃棄されることになったそうだ。つまりは大気圏に突入させての焼却処分ということ。「衛星を使った携帯電話」と鳴り物入りで登場したわりには、哀れな末路である。

  まあ移動体通信インフラとして、商業ベースでは成功することは出来なかったけれど、こういう壮大な発想は大好きである。だって携帯電話からの電波を地球上空遙か上の衛星で受けて、しかもその衛星が世界中をカバーするほどの多数でネットワークを形成しているっていうんだから、SF の世界そのものではないか。まさににいつでもどこでも誰とでも。NTT ドコモのキャッチコピーを狭い日本だけでなく地球規模で実現していた、正しい SF 的ガジェットだったわけだ。

  しかし現実は、恐ろしく高い通信料金のために思ったほど顧客を集めることが出来ずに頓挫。実に残念である。ううむ、やはり今時のケータイたるもの、カラー液晶でメールも送れて十六音同時発音の着メロ機能付き、ついでに「たれぱんだ」の待ち受け画面ぐらい装備してないとダメってことなのか。そういう問題か。

  ちなみにこのイリジウム衛星は鏡のように反射率の高い金属製平面アンテナを三枚搭載しており、これに太陽の光がうまく反射したときに強烈な輝き(フレア)を十数秒間放つことで知られている。全天で六十六個と数も多いため、その現象はしばしば観測することが出来る。条件さえ良ければ最大でマイナス八等級に光るということなので、金星(最大マイナス四等級)よりも遙かに明るい。これだけ鮮烈ならば昼間の空でも見えるはずである。俺は残念ながらその光をまだ見たことはないが、焼却処分される前に一度ぐらいは観測してみたいものだ。

  さて、明日から四日間の予定で台湾(台北市)に行ってくる。毎度のことながらノート PC を持参するので、旅行中もこのページを更新する予定である。しかしもし更新されていないようだったら、ネットへのアクセスに失敗したか、あるいは台湾料理の食い過ぎで食い倒れていると思っていただきたい。どちらかというと後者の可能性が非常に高いな。

  では、行ってきます。


08月30日(水)
  予想通りと言うべきか、本日の結果をもちまして禁煙は来年秋以降に持ち越しとなりました。まあ世の中そんなに甘くはないと重々承知してはいるつもりだが、なにもこういう負け方をしなくても。もし俺が肺ガンで死んだら、それは福森、貴様のせいだ。とほほ。

  さ、寝よ寝よ。


08月29日(火)
  延長十回裏に殊勲のサヨナラタイムリーヒットを放った「一人いてまえ」こと中根仁選手が、結構おっさんかと思っていたのに実は同い年であることに最近気づいて大変驚愕しているハマダです。ちなみに今日の先発だった小宮山投手は二つ上。やっぱりおっさんでした。ああよかった。何がよかっただか。

  いやしかし、守護神・高津を打ち崩して同点、そのまま勢いに乗ってサヨナラ勝ちって、出来すぎとかそういう以前にどうかしていると思うのだが、とにかくこれで六連勝。平気で七連敗したり、かと思えば狂ったように打ちまくって連戦連勝したりと、相変わらず強いのか弱いのかよく分からないけれど、勝っても負けても楽しませてくれるチームである。

  それにしてもこの勢いはどうしたことか。ツキもある。こちらが打てないときは相手も打てない。先発、中継ぎがこてんぱんにやられても、何故か打線の調子が上向きになり、それ以上に打ちまくって得点をもぎ取る。まるで何かが取り憑いているかの如く、良い方へ良い方へと転がっていく。物事には「絶対」ということはないし、しかもスポーツの世界では「勢い」が雌雄を決する時の大きなファクタになることもある。もしかしてこの調子でいって、ついでに水道橋と名古屋の某球団が失速してくれたりすれば、よもや。

  なんてのは、ファンの贔屓目、というより妄想だろう。「もしも」が現実となったら、私、すっぱりタバコやめます。要するにそれぐらいあり得ないことだ。

  でもまあ、そろそろタバコをやめてもいいか、なんて思ってみたりもする。


08月28日(月)
  ドラゴンクエストVIIをプレイ中の方々、もうフリーズしましたか?って、ソフトのバグなのかマッピングのミスなのかは知らないけど、やっぱり突貫工事で発売したからか、デバッグをきっちりやらなかったのだろうか。まあどんなソフトウェアであれ多かれ少なかれバグは付き物というものの、度重なる発売延期で、さすがにもう待ったなし状態に追い込まれて焦ったのかなあ。さて、どうやって収集をつけるのか。

  で、ドラゴンクエストVIIである。正直言ってほとんど興味がない。「ドクタースランプ」や「ドラゴンボール」で知られる(というよりこれしかない)鳥山明デザインのキャラクタがどうにも鼻につくというのは置いておくとしても、あまりにストレートすぎる物語が俺には耐えられそうにない。もっともそういう「正当派」然なところがドラクエをドラクエたらしめている所以だとは理解できるのだが、しかし RPG だってファンタジーなのだから、もっと物語の背後にある宗教観や歴史観みたいなものを感じさせてほしい、と思う。「指輪物語」みたいにしろ、とは言わないまでも。

  まあ PlayStation 上の RPG のもう一つの雄、「ファイナルファンタジーシリーズ」にそういう屋台骨的な観点があるのかと問われれば答えに窮してしまうが、「FF」には「ドラクエ」にはないひねた要素というか、「伝統なんかクソ食らえ」的なアナーキーさが大きな魅力の一つではある。節操がないとも言うのかもしれないが。

  って、実はドラクエシリーズってほとんどやったことがない(大昔に友人宅でさわった程度)くせに、こんな偉そうなことを言うのもどうかと思うのだが、そういう私は現在のところ「DINO CRICIS2」待機中(九月十三日発売)である。ええそうです。私、カプコンに魂をまるごと売り飛ばしております。


08月27日(日)
  先日購入予約した SONY 版 Palm マシン「CLIE」。カラー、モノクロのラインナップのうち、やはりどうせ買うならカラーに、ということでカラーモデルを購入予約したのだが、ネットでの情報によると、なんでもカラーモデルは液晶の見え具合が今ひとつという不穏な話が散見される。まあ採用している液晶の仕様上(反射型液晶:外来光を反射して液晶を表示する)、視認性がある程度悪いのは仕方がないとしても、実際のところはどうなのか、大変気になるのである。すると渡りに船というかなんというか、有楽町のソニービルで「CLIE」が展示されているという。おお。そうとくれば、実物を見れば正に一目瞭然である。ということで、午後からちょいと銀座まで足をのばしてみた。

  さっそくソニービルの五階フロアに行ってみると、カラーモデルが三台、モノクロが二台展示されていた。おおっ。これか。手に取ってみると、まずその想像以上の小ささと軽さに驚く。事前情報としては聞いていたが、ううむ、ここまでとは。俺の手は一般的な成人男子よりもかなり大きめサイズなのであまり参考にならないかもしれないが、ちょうど手のひらにすっぽりと収まる大きさ。軽さと相まって手にするのが苦にならない非常に収まりの良いサイズである。手にした感触もなかなか良い。総アルミ筐体の本家 Palm Vx と違い、プラスチック成形の筐体ということで妙に安っぽい質感になるのではと危惧していたが、そこはさすがソニー、安っぽさなぞ微塵も感じられないデザインとカラーリングである。ううむ、やっぱり上手いよなあ、こういうところ。俺を雇用する会社の製品とはどこが違うんだろうか。

  ところで肝心のカラー液晶の視認性だが、確かに TFT カラー液晶と比べると発色性の悪さとコントラストの低さは感じるものの、これなら十分実用になると思う。フロアは少し暗めの蛍光灯照明だったが、液晶表示が暗くて見えないということはなかった。一般的な室内照明ならここよりはもう少し明るいはずで、そうであればもっと視認性は上がるはずである。実際インストールされていたゲームの「ギャラクシアン」をしばらくプレイしてみたが、ミサイルや敵機を見失うこともなく全然問題なく遊べた。いやしかし、こういうゲーム系のアプリケーションを見ると、カラーって良いな、と思う。白黒じゃどうしたってこういう臨場感は出ないよなあ。

  ジョグダイヤルのクリックが固めだったのがちょっと気になるものの、クルクル回してピッと選択する操作感自体は小気味良い。いちいちスタイラスペンでタップしないでも片手で楽々操作できるってのは、PDA のユーザインタフェースとしてやっぱり楽チンだ。

  ということで、来月の発売開始が大変楽しみである。手元に届くのはいつになるのかはさっぱりわからないけど。


08月26日(土)
  午後三時半起床。この問答無用の敗北感はなんだ。

  CATV で夜中から放送されていた ANIMAX の「日本のアニメ・ベスト100」を見る。なんでもこの企画は、今日の正午から明日の午後六時まで三十時間ぶっ続けで放送されるというとんでもない番組だそうで、さすがに全部見るのはちょっと無理だが、ちょうど見始めた夜半からは「真夜中のジャパニメーション」という内容で「AKIRA」や「攻殻機動隊」などの劇場版長編や、「明日のジョー」、「巨人の星」、「頭文字 D」などのダイジェストシーンが次々と流れるもんだから、ついつい見続けてしまう。

  なんだかんだと「頭文字 D」が終わったときは朝の六時。いい加減にもう寝ようと思ったら、次に放送されたのが「あらいぐまラスカル」の最終回である。ううむ、そう来たか。夜通しアニメを見続けてナチュラル・ハイ状態になった脳味噌にその攻撃とは。滂沱して見る。えらいぞスターリング。


08月25日(金)
  おおっ、愛してるぜ相川!って、まあ結果が良かったものの、いくらなんでも残塁が多すぎだよなあ。

  「NTT、世界初の自己増殖するLSIを開発」。
  ううむ、「増殖」と聞くとどうしても反射的に「ここは警察じゃないよ〜」を思い出してしまうが(古)、この NTT が発表した「用途や環境に応じて動作中でも回路を自ら変化・再構成させる LSI 」はかなり衝撃的な内容である。おそらく生命プログラムと FPGA(Field Programable Gate Arrey)を高度に組み合わせて実現しているのだろうが、しかしどういったアルゴリズムで構成されているのか。よくわからん。

  こういう「自己増殖」や「自己修復」なんて、今まではソフトウェアの世界であればいろいろと研究されてきた分野であるが、よもやハードウェアにも応用されたとはなあ。増殖や修復を繰り返しているうちに、そのうち勝手に遺伝的アルゴリズムを会得し、優性遺伝により指数関数的に知識レベルが向上して、いつかは独自の文化を形成する、なんてこともありえるかもしれない。ここまでくるとホーガンの「造物主の掟」を彷彿とさせる話であるが、夢物語だった SF の世界も、なんとなく現実味を帯びてきたような気がする。

  まあ実際にそこまでいくのはもうちょっと時間がかかりそうだけど、とりあえず回路設計技術者の身分としては「回路にバグがあっても勝手に直してくれる」LSI なんてのが出てくれれば大変ありがたい。ううっ、バグ退散退散。


08月24日(木)
  「魔球をつくる-究極の変化球を求めて-」(岩波科学ライブラリー)読了。カーブやシュート(スクリューボール)、ナックル、フォークボールといった様々な変化球が「何故変化するのか」を、スーパーコンピュータを用いた流体力学的解析で次々と解き明かしていく本書の著者は、元日産自動車で車体の空気力学特性の研究に携わっていた人。現在は理化学研究所にて野球の変化球の研究にひたすら邁進する日々だそう。ううむ、趣味が高じて、というか単なる野球マニアとみた。この人。

  で、内容の方は、「蝶のようにひらひらと舞った」とされる元中日ドラゴンズ・杉下茂の伝説のフォークボールが本当にゆらゆら不規則に揺れながら落ちていく様子を解明したり、西武ライオンズの松坂が投げている「落ちる高速スライダー」は、実は「ジャイロボール」(球が螺旋状に高速回転し、初速と終速の差があまりない割に急激に落ちる)と呼ばれる新しいタイプの変化球であることを指摘するなど、非常に興味深い内容となっている。それにしてもたった一ミリの高さしかないボールの縫い目が、こうまで球の変化に影響を与えているとはなあ。

  こうして流体力学と数値シミュレーションを駆使して解析する過程も面白いけど、おそらく流体力学なんて露ほども知らない野球の投手達が、縫い目の握りやスナップの利かせ方をあれこれ試行錯誤して、球を変化させる術を体験的に会得しているという事実も興味深い。しかし今後はこうした科学的なアプローチからみた効果的な変化球の体得法が流行ってくるのかも。「球をリリースする時に、中指にあと二十五グラム加重して」とか。野球の世界にも IT 革命が起きたりして。

  ところで著者の数値計算結果によると、『巨人の星』で星飛雄馬が投げた「消える魔球」(打者の手前で一度落ち、ホームベース付近で浮き上がる魔球)は理論的には実現可能とのことだ。ただしそれには球の回転がほぼ無回転で、しかも時速百八十九キロ以上の豪速球を投げる必要がある。どうです、一つ挑戦してみませんか松坂君。


08月23日(水)
  長かった夏休みが終わって今日から仕事に復帰である。が、案の定というかなんというか、休み期間中にすっかりボケた頭と体がそう簡単にシャッキリするわけがなく、朝起きてダラダラしているうちに家を出るのが遅れ、フレックスの始業時間に間に合わず遅刻(午前中有休扱い)。いきなりやる気なし。嗚呼ダメ人間万歳。

  先週に型を取った前歯のブリッジを取り付けるために、夕方から近所の歯医者へ。まあ下の前歯なのでほとんど目立たなかったから良かったものの、やはり歯と歯の間が空いていると、どうにも気になって落ち着かなかった。そんな「すきっ歯(通称バカ殿)」ともこれでようやくおさらばである。

  それにしても過去何度も歯医者のお世話になっているのに、未だにこの歯医者独特の雰囲気には馴染めない。かすかに香る消毒液の匂い、歯を削るタービンの甲高い音。これらの匂いや音の刺激材料が、無意識のうちに遠い昔に歯医者で受けた苦行を想起させるからだろうか。とは言っても今回の場合はブリッジを取り付けるだけである。歯茎にブッ太い針の麻酔注射を何本もぶち込み、ゴリゴリ歯を削ってついでに神経を抜く、なんて想像するだけで背筋に冷たいものが走るような治療ではないから、まだ気が楽である。

  なんて考えている間に取り付けが終了し、ガーッとうがい。ああ今回はほんとに楽だったな。

  「じゃあハマダさん、これで終わりですねー」
  ちょっと太目の担当歯医者が、にこやかな口調で(マスクで口元は見えないが)言う。やれやれ、これぐらいだったら歯医者もたまには来てもいいかな。

  「で、次回なんですけど、また水曜日でいいですか?」
  え?次回?これで終わりじゃないの?

  「いやね、右下の奥歯なんですけど、ちょっと虫が食ってるみたいですから、これもついでに治しちゃいましょう」
  げっ。それって虫歯ってことっすか?削るってことっすか?よもやひと思いに抜いちゃうってことっすか?それって痛い?痛いのイヤ。絶対にイヤ。

  「ええと、じゃ来週の水曜日、六時ごろに来てください。ムフ」
  おいムフってなんだよムフって。なぜ笑うのだ歯医者。


08月22日(火)
  待ち焦がれていた SONY 版 Palm マシン「CLIE」のネット販売がついに開始されたので、さっそく SONY の Web サイト「PDA Style(仮)」で先行予約を申し込んだ。なんでも昨日(二十一日)の開始直後はアクセスが集中しすぎて全然つながらなかったそうだが、昨日の深夜にアクセスした限りでは滞ることなくすんなりとつながった。肝心の購入機種・周辺機器だが、いろいろ悩んだ結果、結局はカラーモデルの「PEG-S500C/D」+「モバイルコミュニケーションアダプタ」+「メモリスティック(32MB)」という無難な組み合わせを選択。メモリスティックはアキバあたりの量販店で買った方が安いような気がしないでもないけど、まあものはついでということで。

  ところでこのサイトで発売前は「ネットで予約すると発売日に確実にお手元にお届け!」なんて調子のいいことを言っておきながら、当初見込んでいた数を遙かに上回る予約が殺到したらしく、結局宅配は発売日から一週間から十日遅れることになるらしい。どうやらここは「Playstation2」のネット販売から何も学んでいない真性バカが企画・管理を担当しているようだ。まあ届くのを気長に待ちましょう。

  「空想科学読本3」(メディアファクトリー)読了。特撮番組やアニメなどいわゆる「空想科学」世界の出来事を、科学的に検証する第三弾。さすがに三弾目とあって前二作に比べると多少パワーが落ちているような気がするが、それでもネタの取り上げ方や検証・考察法の切れ味は数多の亜流とは一線を画す。味のあるイラストや、紙面下部のちょっととぼけた注釈も健在である。しかしそうか、空想科学上最強なのは、「キン肉マン」に出てくる「ステカセキング」だったとは。いたかなあ、そんなやつ。全然覚えてない。それにしても、こういうくだらないことを真剣に考える人は大好きだ。次作も楽しみである。

  さて、夏期休暇も今日で終了。途中で何日か休日出勤したものの、それを挟んだ前後半にいろいろとイベントがあったりして、トータルではなんだかずいぶん長いこと休んだような気がする。ともかく、休日の日々は終わって明日からまたいつもの生活が帰ってくる。「休暇モード」にどっぷり浸かったおかげで、仕事の「勘」をすっかり忘れてしまった感が多分にするが、なにせ明日からまた忙しい日々だ。張り切ってバリバリ働くぞ!(大嘘)


08月21日(月)
  本来なら昨日で夏の休暇は終了し、今日から会社が始まるはずなのだが、今日明日と二日間の休暇延長と大層なご身分の俺。とは言ってもこの二日の休みは、ゴールデンウィークに休日出勤した分の振り替え休日である。確かまだゴールデンウィーク分は残り一日、さらに先週の夏休み期間中に出勤した分が二日、合計三日分は振り替え休日が取れる。いっそのことそれらを全部つぎ込んで今週丸ごと休みにしてもいいのだけど、さすがにそれはちょっと、と思いとどまった。ああ意気地なし。知らないうちに俺も日本人的サラリーマン気質にどっぷり浸かっているというとこだろうか。

  午後から横浜駅西口周辺を手始めに、関内、中華街、みなとみらいを回るお上りさん的なコースを散策。元横浜市民としては何をいまさらというところだが、しかし特にみなとみらいの辺りなんてすっかり変わってしまってさっぱりわからん。桜木町なんて、昔は日本丸がぽつねんと捨て置かれているぐらいのしょぼい場所だったのに、っていつの時代だそれは。

  お上りさんついでにランドマークタワーの展望階へ。地上高二百三十メートルから眺める三百六十度ぐるりの夜景は実に見事だが、実家を見つけてみようと思ったのに当然ながら暗くてどこがどの辺だか全然わからない。やはりここには昼間に来るべきである、ってロマンチックのかけらもない。

  実家より深夜に帰宅。明日も休みだ嬉しいな。


08月20日(日)
  昼過ぎにのろのろと起床。起きしなに全員より「いびきが凄かった」との指摘。ううっ、普段はほとんどいびきなんてかかないのに、一体どうしたことか。疲れているのか。それとも寝る方角が悪かったか。

  かみさん友人二人を家まで送っていったあとに、横浜の実家へ。そういえばそろそろ実家の地域では夏祭りがやっている頃だよなあ、なんて思っていたら正に今日がその日だった。晩飯を食べてから、遠くから聞こえてくる祭囃子に誘われるように、祭りが行われている近所の運動場へ行ってみる。

  やぐらを中心に盆踊りを踊る人の輪が二列。その周りには、焼きそばやかき氷を売る店、縁日が少々。自治体主導の地域のお祭り故、いかにもありがちなこぢんまりとしたものではあるけれど、ガキの頃はずいぶんと盛大に感じたものだ。年齢を重ねるにつれ、目にする事象は矮小化し、対して記憶の風景は相対的に肥大化されて脳深部海馬にファイルされる。

  それにしてもこの子供の多さはどうだ。まるで外洋を回遊するマグロの群のように走り回る子供の大群。まさかこの地域だけ異常に出生率が高いなんてことはないだろうが、彼らを見ていると「少子化」なんてどこかよその国の話のような気がしてくる。しかし子供は元気だよなあ。常に動き続けるそのパワーは一体どこから出てくるのか。止まると死ぬのか君達は。まあ俺もあと三十年かそこらしたら、君らに食わせてもらわにゃならんのだ。今のうちにせいぜい走り回って、しっかり体を鍛えるがよろしい。

  ということで、今日は実家に泊。


08月19日(土)
  かみさんの友人二人が我が家にお泊まりで来訪。「ボケとつっこみ」を自然に役割分担する様は、「三人寄れば姦(かしま)しい」というより「類は友を呼ぶ」というべきか。スイカを食ったり臨時パソコン教室を開いたりしているうちに、なんだかんだと朝七時まで。

  世間一般の流行から一歩(あるいはそれ以上)遅れているのは今に始まったことではないが、いまさらながら「ロケットボーイズ(上・下)」(草思社)読了。この本は今年初頭に公開された映画『遠い空の向こうに』の原作で、元 NASA ロケット技術者の少年期時代を綴った自伝。五十年代アメリカの貧しい炭坑町を背景として、頑固一徹な父親との対立を主軸に、父親に反対されながらも「ロケットを空に飛ばす」という夢を追い続ける少年たちの物語である。って、いかにも米国産少年時代懐古小説にありがちな設定ながら変にお涙頂戴にならないのは、著者の生き生きとした描写力のたまものだろうか。一応はノンフィクションと銘打っている割に、小説のように首尾一貫した物語になっているあたりはかなりの創作部分があるような気がするが、読後に感ずる深い感動の前にはそんなことはどうでもよくなる。いい話である。

 ところで本国での映画のタイトルは『October Sky(十月の空)』だそうだが、これがなかなか意味深である。「十月の空」とは、少年達がロケットを作り始めるきっかけとなったロシアの人工衛星「スプートニク」が舞った空、そしてもちろん少年達の打ち上げたロケットが飛ぶ空である。十月の、少し寒い空。主人公が体験する苦悩と苦節が、この寒空にうっすらと滲んでいるような感じがする。
 ちなみに「October Sky」は、原作タイトル「Rocket Boys」のアナグラムになっている。「Rocket Boys」がタイトルではあまりにもそのままで面白くない、ということで著者自身が考案したそうだ。すばらしい。

  この本は、もちろん宇宙を夢見る子供が読んでも十分に面白いと思うが、それ以上に子供を持つ親が読むと、とても意義深い気がする、なんて人の親でもないくせに僭越なことを言ってみたり。


08月18日(金)
  近所に住むかみさんの友人の子供(一歳・男児)を観察に午後から。未だ土の汚れを知らぬ一歳児の足は、プニプニとした手触りが大変気持ちいい。「乳幼児足の裏評論家」の俺の評価は星三つ(三点満点)。うむ、いい足の裏である。最高ですかー。最高ですー。

  そろそろ台湾情報でも仕入れておこうかと、船橋ららぽーと内の本屋を物色。「地球の歩き方」の類の旅行情報誌はすでにかみさんが手に入れているので、何かもうちょっと毛色の違うものはないかと探していると、渡辺満里奈著の「満里奈の旅ぶくれ −たわわ台湾−」(新潮社)を見つけたので購入。台湾というと金城武とか故宮博物館、総統選挙、大地震、世界の PC 工場ぐらいの認識しかなかったが、最近世間一般的には台湾というと渡辺満里奈、渡辺満里奈といえば台湾、ということになっているらしい。ううむ、そうだったのか。

  で、渡辺満里奈である。すでにアイドルと呼ぶには年齢的にどうかと思われるベテランタレントの部類に入る人というのは周知の通りだが、いわゆる「元おニャン子」という経歴から想像するには意外と言うには失礼ながら、なかなか味のある文章を書く人だということは読売新聞の夕刊に時折掲載されるコラムから知っていた。それを知っていたからこそ著書を手に取ったということもあるが、この本も心酔している中国茶(台湾茶)の紹介を主として、台北、台南、高雄周辺のおいしいものについて、実に愛に溢れた良文を寄せている。とりあえずまだざっと目を通した程度ではあるが、台湾への思い入れがひしと伝わってくるなかなかいい本だと思う。ああ中国茶が飲みたい。そう思わせる。それにしても俺が渡辺満里奈の本を買うことになるなんて夢にも思わなかった。人生、なにが起こるかわからんものだ。


08月17日(木)
  ちょうど顔の真ん中の二本分にあたる俺の下の前歯は、ついぞ永久歯が生えてこなかった。歯医者で撮ったレントゲン写真を見てみると、その部分だけすっぽりと歯が抜け落ちているのがよく分かる。先天的に永久歯がない症例はさほど珍しくはないそうだが、医者に言わせると下の前歯が、それも二本とも欠落しているというのはほとんど例がないらしい。「いやあ、こういうのはなかなか無いんですよ。本当に珍しい歯並びですねえ」と何度歯医者に言われたことか。それは誉めてるのか、それとも違うのか。

  そういうわけで、俺の下の前歯はずっと乳歯のままであった。周囲を大きな永久歯に囲まれて、ちんまりと佇む二本の乳歯。確かに見てくれこそは多少悪いのは否めない。しかし歯肉から顔を出してかれこれ三十余年もの間、文字通り最前線で頑張ってくれているこの小さな象牙質の固まりに、俺はどうにも愛着をもってしまったのだ。何度か歯医者に抜いてインプラントかブリッジを入れることをすすめられたが、かたくなに拒否し続けてきた俺であった。

  ところが数年前に二本のうち一本が力尽きて脱落。長年連れ添った相棒を亡くした残る一本は、なんとか俺だけはと必死に頑張ってくれたが、最後の精気が失せたのか、ついに先日静かに歯茎から抜け失せ、その役目を永久に放棄したのである。

  とまあなにやら長い前置きだったが、要するに前歯が抜けてしまった、ということだ。つまりそれはどういうことか。抜け落ちた乳歯の隙間の分だけ、歯と歯の間がかっぽりと空いてしまったのである。いわゆる「すきっ歯」である。しかも前歯である。バカ殿みたいである。これは大変困る。大変困るので、今日は歯医者に行ってきたのだった。

  予約した時間から遅れること一時間。ずいぶん待たされた後に診察台に座り、これこれこういうことでと事情を説明した。「もうちょっと早く抜いておけば良かったんですがねえ」とやんわりと罵倒する歯医者。そんなのは俺の勝手だ、と言いたいところをぐっとこらえ、今後の治療方針について議論。いくつかある方法のうち、見栄え、効果、そしてかかる費用を鑑みて、ブリッジ方式でダミーの歯を入れることになった。ううむ、これからしばらくは歯医者通いとなりそうだ。

  それにしても歯医者に来ていつも思うのは、診察台に寝そべって下から見上げる歯科助手のおねえさんって、何故かみんな美人に見える不思議である。マスクで口元を隠しているからそう見えるのか。歯科治療という無形の恐怖に、一時のオアシスを歯科助手のおねえさんに見いだすからか。ただ単に俺が制服に妙な劣情を催すタイプなのかも。バカか。


08月16日(水)
  夏休み期間の休日出勤第弐弾。今日も一度会社に寄って、それから都内の某半導体系商社へ。お盆休みの真っ最中だからか、さすがに電車はかなり空いている。電車に乗っている時間はほんの三十分程度だが、それでもゆっくり座って本が読めるのは大変ありがたい。ずっとこうなら毎日休日出勤で電車通勤してもいいかも、なんて思ったり。ううむ、やっぱりイヤだ。

  昨年末から開発がスタートし、途中ごく短い中断が何度かあったものの、数えてかれこれ九ヶ月。季節は冬から春、そして夏と移り変わる中、ひたすら VHDL と格闘し、テストベクタを書き、シミュレーションパターンを穴が空くまで見つめてチェックしたカスタムチップの開発作業が、今日ようやく終わるのである。昨日の晩から流してもらっていた最後のシミュレーション結果をざっとチェックし、全てが設計通りに不具合なく動作していることを確認できれば、万事目出度く終了だ。

  ちょっと緊張しつつ、ワークステーションから吐き出されるチェックリストに目を通し、十数本分のシミュレーション波形を見渡してみる。なんの問題もない。オールグリーンである。

  総ゲート数、約七十五万ゲート。VHDL ソース行、約五万ステップ。8KB の 高速デュアルポートSRAM と 4KB 分の FIFO を 内蔵。バスクロック 64MHz で動作する 32bit CPU とのインターフェースを二つもち、山ほどのフリップフロップと数え切れないほどの AND/OR ゲートで構成されたこのシリコン製の化け物に、俺達はついに勝利したのである。苦節九ヶ月。長い長い戦いは、ようやくその幕を閉じた。

  全てが終わったことを証明する「開発終了確認書」にサインして、人気のないガランとしたフロアで脱力。夏はもうすぐ終わるけれど、俺の本当の夏休みはこれからである。


|←Back| Home |Next→|