みくだり日記    2001年01月後半
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01月31日(水)
  アマゾンで昨日発注した本がもう届いていた。Web には「在庫があれば即日発送」とは書いてあったけど、まさか本当に翌日に届くとは。速い。

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  「室温」(ニコルソン・ベイカー:白水社)読了。若い父親が生まれたばかりの娘を寝かしつけるまでの二十分間に、まるで「東京大学物語」の村上君の如く頭の中に思いついた妄想についてひたすら微細に書きつづける小説。主人公がオフィスのエスカレーターを上がる短い時間の中、靴ひもが切れたことから始まって次々と脱線を続けていく思考の過程を書いた処女作「中二階」と同様な手法だが、本作は赤ん坊を目の前にしたお父さんが主人公だけに、思い浮かぶ妄想の種類がいくぶんほのぼのとしているという印象だ。思い浮かんだ妄想をひたすら書き続けることで成り立っている小説だけに、テーマや目的、結末もなにもないのだが、その妄想がいちいち面白いから一気に読み進んでしまう。妄想の間にときおり書かれる父親から見た赤ちゃんの描写がとても愛らしく(そこから脱線してまた別の妄想に飛んでいくのだが)、うららかな陽気の中で赤ん坊をあやす様子は、まさに「室温」である。

  ちなみに本書の訳者である岸本佐知子という翻訳者は、自らも「気になる部分」という著作を記していて、頭の中に思い浮かんだ些細な事柄を書き綴っていくというスタイルはまるでベイカー作品のようらしい。「アタッシェケース」と書くのに、発音はなぜ「アタッシュケース」になるのかとか、そういうどうでもいいけど気になってしょうがないことがひたすら書いてあるそうだ。こちらも必読である。


01月30日(火)
  amazon.co.jpの送料無料サービスが一月末までに延びたと聞き、何やらとっても買わなくては損な気分になってしまい、つい衝動的に本を注文してしまった。なんだか販売戦略にとっぷりはまっているような気がする。ああ小市民。ともあれ、余計な金を払わずとも本を手にすることが出来るのはありがたいことだ。

  ということで「セーラー服とエッフェル塔」(鹿島茂:文藝春秋)を購入。ちなみにこれ、タイトルはこんなだがエロ小説にあらず。限りなく近いかもしれないけど。

  いやしかしクリック一つで本を自動的に自宅に送り届けてくれるとは、実に便利な世の中になったものである。特に俺のような勤め人の身、しかも会社の周囲にはろくな本屋もなく、仮にあったとしても会社帰りに本屋に立ち寄る頃にはとっくに閉まっているような完全夜型生活サイクルで過ごす者にとって、いつでも好きなとき思い立ったときにすかさず注文できる直販サイトは大変ありがたい存在だ。わざわざ休みの日に本屋に出かける時間も手間も省けるというものである。もちろん本屋には本屋のいいところがあって、特に目標も決めず、書棚から書棚へとふらふらさまよいながらおもしろそうな本を物色するのはそれはそれで至福の時ではある。しかしすでに購入する本が決定している「決め打ち」ならば、直販系 Web サイトの方が断然お手軽である。いまだにクレジットカードの番号を打ち込む瞬間にちょっと躊躇したりするけれど(小心者でもあるのだ)、それさえ乗り越えればこんなに便利なものはない。

  とここまで書いて何気なくアマゾンの Web ページを見てみたら、いつの間にか送料無料サービスが二月末まで延長されているのであった。なんだよそれ。今朝まで一月末だったじゃんかよ。ううむ、こんなことなら慌てて買うことなかったな。まあいいか。


01月29日(月)
  仕事を終え表に出たとたん強烈な冷気にたじろぐ。今日はずいぶんと冷え込んだ。午後十一時半現在での気温は零下五度。人里離れた山の中とはいえ、このあたりでここまで気温が下がるのも珍しい。ううむ、零下五度である。そりゃあ寒いわけだ。なんだか先日の吹雪の日よりもよっぽど寒い。

  ところでアメダスの気温図(一月三十日午前一時現在)を見ると、しかしこの図を見てみると、海に近い沿岸部は温度が高く、内陸に向かうにつれて急激に温度が下がっていることがわかる。同じ温度の地点を線で結んでいくと、気温勾配が見事な等高線になっているのがおもしろい。例えば厳冬のイメージがある能登半島の先っちょでは氷点下を割っていないのに、それよりもずっと緯度が低く、なんとなく暖かそうな気がする紀伊半島の内陸あたりでは軒並み零度以下になっていたりする。

  もちろん気温を決定する要因としてはその時の気象状況、特に高層域の寒気の入り方、風向き、雲が発生しているか否か、日射量などなどの条件が複雑に絡み合い、またもちろん標高差も考えに入れなければならず一概には言えないが、基本的にこういう逆転現象(と言っていいのだろうか)をおこすのは、その地が海に近いかそうでないかが大きなファクタとなる。そう考えると海水の熱容量というのは想像以上に大きなものなのである。

  ということで、要するに何が言いたいのかというと、海が丸ごとでっかい温泉だったらいいよなあ、という小学生の作文のようなまとめであります。ほんとに寒いっすよ今日は。


01月28日(日)
  まるでシベリアの大地を思わせるような吹雪の一日が明けて、今日はすっかり良い天気である。気温もぐんぐん上がり、車に積もっていた雪も昼過ぎにはすっかり溶けてしまった。しかし雪かきしていない歩道などは、太陽の光を浴びて雪が中途半端に溶け、シャーベット状にべちゃべちゃ。除雪して道路の至る所に積み上げられた雪のかたまりから溶けた水が流れ出して、べちゃべちゃ具合にさらに追い打ちをかける。足元が悪い。大変滑りやすい。おかげで人が転ぶ。チャリンコがスリップする。ついでに犬もコケる。あたふたするな、犬。

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  船橋ららぽーとの映画館にて「頭文字[イニシャル]D Third Stage The Movie」鑑賞。映画館で映画を見るのも久しぶりかも。
  本来であれば二十数話の連続番組にするところをわずか一時間半あまりの映画に詰め込むのだから、さすがに慌ただしい雰囲気ではあるが、逆にほぼ原作に忠実なストーリー展開をぎゅっと凝縮していて飽きることはないとも言える。以前のテレビアニメ版では「できそこないのグランツーリスモ」というか、良くも悪くもペラペラの CG 的だった車の描写が格段の進歩で、バトルシーンなぞは実写と見まがうばかりのリアリティになった。特に日光いろは坂での小柏カイとのバトルで、ヘアピンコーナーをジャンプして飛び越すシーンなぞは鳥肌ものの迫力。あまりにリアルなので、車に酔う人は映画館の大画面で見ていると気持ち悪くなるかも。一方テレビアニメ版の Second Stage あたりから引き継ぐ「いかにもアニメ顔」的な絵柄が気になると言えば気になる。高橋涼介なんて場末のホストみたいな顔だもんなあ。ファンは怒らないんだろうか。

  映画を見たあとはユニクロでスキー用のフリースやらなにやらをぶらぶらと買い物。ついでに本屋にて「室温」(ニコルソン・ベイカー:白水社)を購入。ららぽーとの「くまざわ書店」は白水社の品揃えが良いので大変気に入っているのである。


01月27日(土)
  予報通り朝から雪である。それも半端ではない降り方。雪が降ってくる量自体もかなり多いのだが、それに加えて強烈な北風が吹き荒れ、まるで雪国のそれのような吹雪状態になっている。容赦なく降り注ぐ横殴りの雪が、なんとなく「津軽海峡冬景色」を思わせる。そういえば都はるみって今何をしてるんだっけか。普通のおばはんか。

  そんな吹雪をかき分けかき分け、今日も休日出勤な私だ。道にはすでに十数センチの積雪。俺の車はいわゆるクロカン系 4WD 車だからこの程度の雪ならどうということはないが(年末にタイヤも替えたのだ)、会社までの道すがら、至る所でスタックしている車に出くわす。さすがにここまで積もると普通のセダン、特に FR 車だとスタッドレスタイヤを履くかチェーンを巻かないとどうにもならないだろう。

  こんな機会も滅多にないので、仕事を終えたあと会社の駐車場でちょっと遊んでみた。少しオーバースピード気味で突っ込み、軽くステアリングを切ってすかさずサイドブレーキを引くと、面白いように車がくるっと百八十度回るのだ。これはいわゆる「サイド(ブレーキ)ターン」と呼ばれる技で、走り屋の方々が峠を攻める時に常套的に使うテクニックの一つだが、もちろん普通の舗装路だと相当なスピードで突っ込まないとここまで回らない。雪が降って滑りやすくなっているから素人の俺でも出来る芸当だが、しかし気分は WRC のスウェディッシュ・ラリー、スバル・ワークスチームのリチャード・バーンズか三菱ランエボを駆るトミ・マキネンか、ってなもんだ。いやあ、これはおもしろい。

  あんまりくるくる回ったら目も回ったのでおとなしく帰宅。雪は夜半近くまで降り続いたようだ。


01月26日(金)
  普段より一時間半ほど早い時間に死ぬ思いで起床。明日の朝は早いと分かっているのだからもう少し早い時間に寝ればいいものだが、体に染み付いた睡眠サイクルをいきなり変えるのは難儀である。半分眠ったまま電車を乗り継ぎ(乗り越さなくて良かった)、横浜市戸塚区へ。しかし JR の普通の券売機で千円以上の切符を買うのもなかなか珍しい機会ではある。これが実家からなら横浜市営地下鉄一本で行ける距離なのだが。千葉から戸塚は、やはり果てしなく遠い。

  ところで戸塚というと、俺が三歳まで住んでいたところ。ちょうど今日訪れた場所も、その当時住んでいたところからほんの目と鼻の先だ。もっともその当時は俺も乳児に毛の生えたただのはなたれ三歳児であって、行動範囲も家のごく近い距離のところでしかなかったから、ここらに住んでいたとは言え街並みを見渡してもその当時の記憶はまったくない。しかしなんというか、懐かしい「匂い」がするのだ。海から自分のホームグラウンド(ホームリバーか)に帰ってきた鮭も、きっとこんな気分なんだろうか。ベーリング海峡を渡る海鳥とかも。

  仕事が思ったより早く終わったので、帰りにちょとだけ横浜駅に寄り道。ダイヤモンド地下街の有隣堂にて「なにもそこまで」(ナンシー関:文春文庫)購入。ナンシー関のように版画が彫れたら、さぞや楽しかろうと思う。彫ってみるか、俺も消しゴムに。


01月25日(木)
  ハード不具合説が消えて一安心していたところに、今度はまた別の問題が。これは多分こっち(ハード)のせいではないと思うが、確認作業やらデバッグやらで今日も日付が変わるまで。

  そんなくそ忙しい中、ワイン評論家としても名高い(かどうかは知らない)元読売の江川卓が何を思ったか突如として工業高校のラグビー部顧問に就任し、悪行の限りをつくした並み居る不良ラグビー部員達を持ち前の熱血魂で更正させてラグビーに集中させ、隠し子騒動や暴力事件やらラグビー部存続の危機やらマネージャーが車にはねられて死んだりやらいろいろあったのち、病気で死んだ部員がデザインしたユニフォームを着て花園まで進出したものの決勝で百九対零で負けたのを契機にあっさりと顧問を辞め、その後なぜか魚類専門の絵描きに転身して世界を放浪して回るという「卓魚図」なる物語を考えたのだが、あまりにくだらないのでボツ。

  明日は朝から横浜の戸塚に外出。帰りは実家に行こうか。


01月24日(水)
  一時は非常にまずい状態に陥った今回の不具合騒動(と言っても誰にも話していないので一人で悶々としていたのだが)。結局のところハードのバグではなく、純粋なソフトウェアの問題と言うことが判明した。いやはやよかったよかった。これが本当にハードの問題だったら、下手すれば進退問題にもなりかねないところだった。ともかく、一安心だ。

  ほっとしたら猛烈に腹が減ったので、今日の晩飯は焼肉だ。しかし世の中、美味しく焼肉がいただける以上の幸せがあるだろうか。


01月23日(火)
  今日も今日とて ROM 評価の一日。いい加減飽きてきたような気もするが、しかしこれも製品化前の大事なタスクである。ときおり意識が遠くに行ってしまいそうなのにもなんとか耐え、ニコチンとカフェインのオーバードープで覚醒レベルを上げてバグ出しに勤しむのであった。

  今日も大小いくつかのバグを見つけたのだが、その中でどうにも不可解な動作する現象を発見した。見つけた当初はまたいつものバグかと思い、おいおいまた見つけちまったぜしょうがねえなあうちのソフトはバグばっかで、と第一次大戦中の撃墜王よろしくバグ発見を示す星マークを機械に貼って悦に入っていた(本当はそんなことはしない)のだが、しかしどうも様子が変なのだ。ソフトウェアのバグにしては動きがおかしすぎる。もしやと思いいろいろ調べてみると、これがどうやらハードウェアの不具合くさいのである。げげっ。しかもそれって俺の担当のところ。のような気がする。とてもする。すごくする。

  ということで今日は久々の午前様のため、日記は唐突に終わるのである。ううむ、まずいかも。


01月22日(月)
  今日会社に来てコーヒーでも飲もうかと財布を開けたら、所持金が六十四円だったのである。六十四円。デフレ懸念のこのご時世、一円の価値はすっかり下がってしまった昨今であるが、とにかく六十四円だ。五十円切手はなんとか買えるとして、封書(八十円)は出せない。腰に手を当てつつヤクルト(三十五円)を豪快に一気飲みできても、ヤクルトミルミル(九十円)の甘ったるい汁は一滴も啜れない。ガリガリ君(六十円)を狂ったように貪えど、BIG スイカバー(百円)の種を模したチョコチップを舌で転がすことすらできない。六十四円である。ろくじゅうよえん。平仮名で書くと空しさ感倍増だ。ロクジュウヨエン。片仮名で書くと学術的な雰囲気がするから不思議だ。ロクジュ・ウヨエン。主に南米の高山地に生息する甲虫の学術名で、発達した触覚と鎌のような前足が特徴。主として白黒まだら模様、時として赤い斑点を持つ個体もある。体長はメスが七センチ、オスが五センチ。湿地帯や腐葉土中など湿気を含んだ地中を好み、そのため羽が退化。通俗名はヤンボリ・テナガ・オサムシ。いないよそんなの。ところで今思ったのだが、六十四円と新宿御苑はちょっと似ている。

  なんだか小学校の頃の貯金箱の中身を思い出してしまった。


01月21日(日)
  今回の雪は昨夜半にはみぞれになったようだが、ピーク時には数センチの積雪だったらしい。らしいというのは、今日起きたときには強い日差しによってすっかり溶けてなくなっていたから。雲一つない青空と燦々と輝く日差しで昨日に比べるとずいぶん暖かい。ここ最近の冷え込みと違って今日はこんな春のような陽気だが、さすがに最近は天気予報や新聞などを見ても気象関係者も最近は暖冬という言葉を口にしなくなった。この冬は長崎あたりでも記録的な積雪を観測するなど、まあ冬らしいと言うのか何というのか。

  そういえば関東地方に雪が降ってそれが積もったのは何年も前のことだ。確か三年前のことだっとと思うが、日中から大雪になった日、電車通勤者に考慮してか会社が退去命令を出し、それじゃあと車で帰宅したところ道はスリップしまくった車やトラックで大渋滞。普段なら二十分程度のところを二時間近くかけてほうほうの体で帰った覚えがある。こんなことがあった以来数年間はほとんど雪は降らなくなった。確かに俺が子供の時分に比べると関東地方で雪の降る年は減っているように思う。これが地球温暖化の影響なのかか否かはよくわからないが、ともかく今年は冷え込んでいることだけは確かだ。まあこういう寒暖の差も、単に自然のサイクルによる平均気温変動という見方もあるが、これがわかるには数十年先を見なければいけないのかも。しかし今世紀が終わる頃には冬の日常ってどうなっているのだろう。関東でも雪は降っているのだろうか。

  ということで、太ももは案の定筋肉痛になってしまった。ふくらはぎにもかなりの張りがある。初滑りで妙な力が入っていたとはいえ、ボードで滑ったあとに筋肉痛になるなんて久しぶりかもしれない。普段の走り込みが足りないのだろうか。


01月20日(土)
  ということで今シーズンの初滑りに行ってきたのである。場所は那須高原のハンターマウンテン。前日に突然決定したため当然日帰りだが、ここは東北自動車道の西那須野 IC から近くにあり、家からでも途中休憩を入れて三時間半もみておけば十分な距離。コースもそこそこ広くて標高が高いため雪質も関東近辺にしてはかなり良い(大がかりなスノーマシンがあるからでもある)から、日帰りスキー行には絶好のロケーションである。

  そのため週末ともなると首都圏付近から押し寄せた人達でかなりの混雑となるのが常なのだが、しかし今日は思ったよりも混んではいなかった。一番混むはずのゲレンデ最下層のリフトでもほとんど待ちなしですいすい乗れる。さすがにゲレンデにはそこそこ人出があるからガラガラという印象ではないが、しかし数年前なら平日並の空き具合だ。ここ最近はスキー人口がめっきり減っているという話を聞くが、こうして実際に週末のスキー場にやってくるとその噂が噂ではなく実体としてよく理解できる。

  そんなわけでさっそく滑り出してみたのだが、今シーズン初滑りとあってなんともおっかなびっくりな出だし。中級者コースはもとより初心者向けの緩斜面でも、完全に腰が引けてしまって上手くエッジに荷重がかからないのだ。やはりまだ昨年、一昨年の「地獄車」のトラウマが脳裏にこびりついているのか。しかし数本滑るうちに徐々にスピードへの恐怖感が薄らぎ、雪面の接地感や荷重をかけてエッジを切り返す感覚が少しずつだが戻ってきたような気がする。こうなるとがんがんスピードを上げてスライドターンからカービング体勢に持っていきたいところだが、まあ今日はシーズン初ってことでまずは感覚を取り戻すのが先決である。何ごともいきなりは体によくない。

  などと思いながら、途中休憩や昼飯をはさんで二十本近くじっくり滑ったあとは太ももがパンパンだ。やっぱり体に余計な力が入っているんだよなあ。帰りに麓の塩原温泉に入って揉みほぐしたけど、明日あたり筋肉痛になりそうだ。


01月19日(金)
  会社の喫煙所でロジスティック部門の人と雑談していたら、先日宅配便を使って福井に送った荷物が大雪のため配送できずに戻ってきてしまったという。郵政省を経由した配送物も遅配しているらしい。「気合いが足らねえんだよ」とのたまう某氏。そういう問題か。ともかく、記録的に降り積もった雪のせいで列車も止まり道も封鎖され宅配物も届かないという、ほとんど陸の孤島となりつつある日本海側地方に住む人達の生活が忍ばれる。まったく、雪の野郎。

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  なんて言っておきながら大変恐縮なのだが、私は明日東北道方面にスキーに行ってくるのであります。ここのところの寒波で相当新雪が積もっているようで、どこのスキー場も素晴らしいコンディションとのこと。いやもうなんていうか。雪最高。雪万歳。
01月18日(木)
  昨日、一昨日に引き続いて今日もまた凄いバグを発見した。今日見つけたバグは、ある一連の操作をするとうちの部長がネカマ(ネット上のオカマ)になるというものだが、いい加減しつこいですかそうですか。

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  ロシアの宇宙ステーション「ミール」が老朽化のため廃棄が決定したそうだ。ミールというと打ち上げ当初(約十五年前)はソ連(当時)の科学力の粋を結集した宇宙ステーションということで大変注目を集めたが、最近、特にソビエト崩壊後はロシアの宇宙開発予算削減の憂き目をもろにかぶり、ろくに手入れもされずにいつも何かが故障した状態だったらしい。確か二年ほど前もどこかの装置の故障でミール内に滞在していた宇宙飛行士が閉じこめられたことがあったし、つい昨年末も通信装置がイカれて地球との交信が不能状態になったばかりであった。まあ過酷な宇宙環境の中でさすがに十五年も使い込むとあちこちガタが出てくるのは致し方ないとしても、しかしこの凋落ぶりには哀愁すら漂う。恨むなら共産主義の崩壊を恨めミールよ。

  ところで先日発表されたスケジュールによると、ミールの廃棄は三月六日、エンジン噴射を用いて軌道を変え、地球大気圏に再突入させて機体の大半を大気との摩擦で燃やし、残りの燃えかすは太平洋上に落下させるとのことである。ロシア政府は「軌道計算はバッチリのイワンポポフ、万事オーケーでハラショーッ!」と言っているそうだが、最近のロシアの著しい科学技術力低下っぷりを見ると一抹の不安が胸をよぎる。ちなみに再突入後の飛行ルートは日本上空も通過することになっている。本当に大丈夫なんだろうなペトルシェフスカヤ。誰だそれは。


01月17日(水)
  ということで今日も ROM 評価に勤しむ一日だったのだが、昨日に引き続いて今日もまたもの凄いバグを発見してしまったのだ。タッチパネルの右上隅を三回タップするところまでは昨日の「機械不死身モード」と同じ操作だが、今度はそれに続いてカーソルキーを左左上上左右下下左下の順で出来るだけ早く押し、画面に現れたダイアログボックスに「351512266」と入力する、という動作を途切れることなく滑らかに七回繰り返す。するとどうだ隣の席に座っている後輩 J が無敵状態になるのである。いやあまたまたびっくりした大変たまげた。って、ちょっと待てこら無敵ってあんた一体なんだよそれ、と訝る向きもあろうかと一応説明しておくと、上記の一連の操作を終えた瞬間やおら立ち上がった後輩 J の体表面が突如として緑色と化したかと思うとべりべりと音を立ててシャツが破け、まるで超人ハルクか北斗の拳のケンシロウのようにムクムクと大胸筋が膨れあがる。片手にはどこからともなくあらわれたナイスバディなブロンド美女をがっしりと抱きしめ、もう片方の手でなみなみ注がれた赤ワインのグラスを高々と掲げるのである。口元にコイーバの葉巻を燻らし、その口から人語ともつかぬ奇声を発するその咆哮は、勝利の雄叫びに違いないのだ。どうだこれを無敵と呼ばんでなんと呼ぶ。

  しかし残念ながら無敵状態は長続きしないようで、一分もしないうちに大胸筋はしぼみブロンド美女は消え失せコイーバもワインもなくなって、あっという間に元の青年の姿に戻ってしまうのだった。なんだつまらんそれはつまらんと調子にのって何度も繰り返しているうちに、やがて後輩 J は机に突っ伏したまま白目をむいてぴくりともしなくなった。やりすぎたのか度が過ぎたのか。昨日のデバック機に続いて君まで壊れたか後輩 J。

  壊れたのは俺か。


01月16日(火)
  足かけ一年半近くの長きに渡り携わっている新規モデルの開発が、いよいよ大詰めを迎えている。すでにハードウェアの性能評価は終わり、現在はソフトウェアの機能評価の段階である。これはいわゆる ROM 評価というフェーズで、機械に搭載されたソフトウェアがきちんと仕様通りに動作するかの確認はもちろんのこと、予期しないような外部からの入力がなされたり、あるいは操作者が見当違いな妙な操作をしたとしても、機械がデッドロックして固まったり、はたまた発狂して暴走することがないか、などなどをチェックするのである。またの名を「バグ出し」とも呼ばれ、地味ではあるが大変重要な作業である。

  まあこの世のソフトウェアでバグのないものはないと言われるぐらいであって、もちろん俺が担当する機械もそうではあるのだが、しかし物には限度というものがあり、けして安くはない価格で世の中に販売するのだから当然ながらそれなりの品質を保証しなければならない。売りつけたあとになって「いやあバグが紛れ込んじゃって」と笑って済まされるものではないのである。出来うる限りバグは潰しておきたい。しかし製品出荷の期日はもう目前に迫っている。時間がない。とにかくない。こうなりゃ人海戦術、スタッフ総出でやるしかないのである。そんな切羽詰まったなか、ハードウェア担当の俺も人足として「バグ出し」に駆り出されているのだった。

  ところで俺が扱っている機械というのはこれがまたちょっとしたシステムであって、いろいろな動作モードやら設定やらが複雑怪奇にからみつき、そうした中からバグを発見するというのもなかなか大変なのである。ある設定をしてそれが仕様通りに動作するのを確認する、なんていう単純なものなら簡単だが、あれとこれとそれを設定して、ある動作モードでこれこれのキーを押して、さらに違うキーを操作してはじめて出てくるバグ、なんてものを発見するにはそれなりの集中力と根気が必要になる。なんとなく格闘ゲームでコンボ技を繰り出すときと似ているというか、あるいは裏技を探すようでもある。

  そんなわけで今日もいくつかのバグを発見したのだが、その中で一番凄いやつを紹介したい。出し方はこうだ。まずはメンテナンスモードでとある設定をしたのち、通常動作モードに移行する。その後モードキーを押して動作モードを切り替え、スタート・ストップキーを押して記録を開始し、記録の途中で再びスタート・ストップキーを押して記録を一旦キャンセルする。その状態でタッチパネルの右上隅を三回タップしたのち操作パネルのカーソルキーを右右左左右右下上下下左左の順番で出来るだけ早く押し、画面に現れたダイアログボックスに「748461」と入力する、という動作を途切れることなく滑らかに五回繰り返すと、なんと機械が不死身モードになるのであった。これはたまげたびっくりした。いやあ、うちのソフト屋もたまにはお茶目なバグを仕込ませておくものだ感心感心、と感慨に耽っている間に不死身モードから抜けたデバッグ機はみるみるうちに HP を減らし、ついに自爆して果てた。おいおい何も壊れんでもいいじゃんか。

  ちょっと疲れているのかもしれない。


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