みくだり日記    2002年08月後半
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08月29日(木)
  私が現在住んでいる地域は梨が特産品で、家からちょっと車を走らせるとそこここに大小の梨園がある。今年もそろそろ収穫の時期らしい。梨園のそばには即席の販売所が設けられていて、実に美味そうな梨が無造作にビニール袋に入れられた状態でたくさん陳列され、これまた即席の販売員と化した梨園のオバチャンと供に、行き交う車に両方の意味で甘い色香を振りまく光景を目にするようになった。

  そういえばこの地に住むようになって早五年。秋口の風物詩としてすっかりおなじみとなった光景である。私の秋は、道ばたに佇む梨と(元)妙齢の女性とともにやってくる。


08月27日(火)
  最後の親不知抜歯から三日目。何を飲み食いしても血の味しかしなかった初日、ようやく口を八割方開けようかという気になった二日目を過ぎ、さすがに患部側での咀嚼は控えてはいるものの、今ではほぼ通常通りの食生活を送れるようになってきた。

  ただしこれも薬の力を借りてのことである。過去三回の抜歯では術後ほとんど痛みはなく、痛み止めもせいぜい初日に服用しただけで済んだのだが、今回はさすがにちょっと大がかりだったからか、術後三日を経っても未だに痛み止めを手放せないでいる。もっとも重症例のように夜も眠れないぐらいにズキズキ痛むとか、膿が出るほど猛烈に腫れるとかというわけではなく、薬が切れると患部付近がなんとなく違和感をともなった鈍い痛みが走るという、まあその程度のことではある。

  だがこの「鈍い痛み」というやつもなかなかやっかいなのである。普段は意識していないのに、ふとしたはずみで気がつくとなんとなく痛い。気になると、ずっと重苦しくジリジリ痛い。なにやら先刻より痛みの度合いが増しているような気がする。喩えるなら、極低速で動作する万力で歯茎を締め付けられるような、そんな感じだろうか。実にはっきりしないモヤモヤした不快感をもたらすのであった。

  ところがこんな鈍痛が、痛み止めを服用するとたちどころに消えてなくなるのである。この魔法の弾丸のような薬名は「ボルタレン」。おなじみ「医者からもらった薬がわかる」によるとフェニル酢酸系の鎮痛・抗炎症剤だそうだが、これがまた素晴らしく良く効く。服用してから数分から数十分もすると、あれほど不快だった痛みがすっとなくなっていく。もしかすると若干のプラシーボ効果も働いているのかもしれないが、それでも痛みがなくなるのは大変ありがたい。おかげで痛みを恐れずに躊躇なく口を開けることができるし、食事も普通にとれる。嗚呼ボルタレン最高。ボルタレン万歳。この薬を開発した人に、心より感謝したい私である。

  ふと見ると、歯医者からもらった痛み止め錠は、残り一つ。そういえばこの前飲んだのは今日の昼過ぎだったか。経験上そろそろ効果が切れて痛み出す頃合いだ。快適な惰眠をむさぼるために今飲んでおくか、それとも明日のためにとっておくか。考えると、なんとなく鈍い痛みが歯茎の底からわき上がる気配がする。


08月26日(月)
  月曜日。今日も暑くて目が覚める。そろそろ夏の暑さにも飽きてきた。

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  ■タマちゃん、鶴見川にあらわる
  多摩川の丸子橋あたりでプカプカ浮いていたと思ったら、今度は鶴見川に移動。なんでも台風十三号による濁流で一度東京湾に流されたあと、鶴見川の河口から上ってきたらしいのだが、しかしよりにもよって鶴見川ですか。七年連続で河川水質調査の全国ワースト三という肩書きは伊達じゃなく、あの川って本当に汚いのである。姿が発見された東急東横線の橋付近は多少上流側なのでまだいくらかマシだが、特に東京湾に注ぐ河口付近は半端じゃない汚さ。「どぶ川」とは正に鶴見川のためにあるような言葉である。なんでまたそんなところにアザラシが入ってくるのか。単に方向音痴だったり。
08月24日(土)
  本日は二週間ぶりの歯医者。ついに親不知抜歯の最終回、第四弾である。

  思い返すに、これら一連の治療を開始したのは五月の中旬であった。逃げ出したくなるような怖い思いもした。痛い思いも(ちょっと)だけした。そんな足かけ三ヶ月以上に渡る歯医者通いも、ようやく終わりがすぐそこにあると思うとなかなか感慨深い。

  長かったそのラストを飾るのは右下顎の親不知。前回まで三回の抜歯が思ったより簡単に終わったこともあり、心理的にはかなり余裕の状態で臨める今回のラスト抜歯である。しかし今度は場所が問題だ。右下側である。上顎より下顎、それも利き腕側(私は右利きである)は、一般的にそちら側で咀嚼しがちな癖があることが多いため、歯根が良く発達して抜きにくい場合があるらしい。言われてみれば、私も右側で物を噛むことが多いような気がする。そうなると、初回の左下は実にあっさりと抜けたのだけど、もしかしたら今度は一筋縄では行かないのではないか。もちろん前回までの実績を鑑みれば、こんな心配も杞憂に終わる確率は高いと思う。思うのだが、やはり一抹の不安は脳裏によぎる。おろろーん。やっぱり何度やっても抜歯は嫌だよう。

  そんな私の不安は、幾ばくかの的中をもたらした。術前の説明によると、レントゲン写真を見ると、どうも歯が斜め後より、つまり咽頭側に傾いて生えているらしく、歯茎に埋まった部分が多すぎるとのこと。そのままではすっぱり抜くことができないらしい。なので歯茎の一部を切開して歯を十分に露出させ、なおかつ電動カッターで歯を二分割してからそれぞれを取り出すという。あわわ、メスで歯茎を切るのはともかく(それも十分嫌だが)、カッターで歯をぶった切るんですか。いやその、先生を信頼もうしあげてはおりますが、たとえば手元がちょっと狂って間違って歯茎も切っちゃったりとか、あまつさえ舌とか頬の内側とか余計なところまでばっくり切ってしまったりとか、そんなことはないのでしょうか。麻酔が効いているのをいいことに、気がついたら口中血だらけ切り傷だらけなんてことは、本当に間違ってもないのでしょうか先生っ。なぜ答えない。どうしてさっさと麻酔の用意なんかを始めるのだあなたはっ。わ、笑っとるな。そのマスクの下で薄ら笑いを浮かべているに違いないのだっ。うあああっ、やっぱり嫌だあっ。やだーっ。

  そんな私の心中を見抜いたか、動かないように(逃げ出さないようにか)歯科助手によって頭をがっちり診察台に押さえつけられ、淡々粛々と手術は始まった。麻酔注射後、おもむろにメスによる歯茎の切開。そして高速タービンによる不快な金属音と振動が、口腔内に残された最後の親不知を正確に分割していく。何度かのトライののち、歯茎内から二つの破片が取り出された時は、術開始から三十分以上が経過していた。その間ほとんど口を開けっぱなし。涎と涙と血と冷や汗が渾然一体になった私の顔面は、おそらく二目と見られないおぞましさだったに違いない。思えばネタ的には写真でも撮ってもらえばよかったか。そんな余裕はまるでなかったのだが。

  ともかく、忌々しい親不知抜歯は、これですべて終了である。長かった。ほんとうに長かったよ。


08月22日(木)
  「ぼっけえ、きょうてえ」(岩井志麻子著:角川ホラー文庫)読了。文庫版が出たので買ってみた。

  タイトルの「ぼっけえ、きょうてえ」とは、岡山地方の言葉で「とても、怖い」という意味だそうだ。この本には表題作の他に「密告函」「あまぞわい」「依って件の如し」の計四作が収められているが、どれも明治から大正時代の岡山県を舞台としている。常に飢饉と背中合わせで暮らす地域で、物語中を流れる空気はどれも窒息しそうなほど濃密である。その舞台背景の中で、色恋沙汰というよりは愛欲と呼びたくなるようなドロドロとした人間関係が繰り広げられる。全ての物語は妙にエロティックで、ねっとりと肌にまとわりつくような湿度の高い読後感を与える。

  それぞれの主人公達は「余所者」であったり「村八分の家の子」であったり「ケガレ」を背負っていたり、つまり何らかの形で差別を受けている人ばかりである。誰もがあくせく働きながら、決して豊かではない暮らしを余儀なくされている。ぎりぎりの状態で生まれる差別は、したがって情け容赦なく主人公達を打ちのめす。なにより怖いのは、人を蔑まないことにはやっていけないほどに余裕のない人々の心と、さらに追いつめられた挙げ句にねじ曲がっていく心ではないか。だから具体的にお化けや妖怪が出てくるわけではないのに、物語はどれも薄気味悪く重苦しく、そして妖しく悲しい。

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  明日は朝から都内某所に外出。私が外出するとなると、やはり雨ですか。都内へ御用向きの皆さん、傘のご用意を。
08月20日(火)
  今日は東京ドームにて読売−横浜戦を観戦。Rolling Stones や Guns'n Roses など、何度かコンサートでは来たことがあるのだが、これが東京ドームでの初の野球観戦である。実はこのチケット、仕事上の某取引先からの頂き物(貢ぎ物とも言う)なのであった。いやあ、タダで野球が見られるとはな。たまには頑張って仕事もしてみるものだ。わほほ。

  しかし場所がドームだけに当然ではあるが、相手はリーグ優勝に向けて爆走中の自称球界の盟主様たる金満球団。かたやこちらは最下位街道ひた走りのやる気なしヘッポコ球団。しかも怒濤の三連敗中。とあっては、やる前から勝敗の行方は見えているようなものだが、一縷の望みを胸に秘め、JR 水道橋駅から続く陸橋を渡った私だった。

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  ということで、大変久々ですが、今日の横浜ベイスターズ。

  ★横浜 4-11 読売
  読売が横浜の先発ホルトを出だしから攻め、まずは一回に松井のセンター前タイムリーで先制。横浜も二回に立ち上がり不安定な桑田から種田のタイムリーで 2 点を奪って逆転するが、その裏に清水のタイムリーと二岡のホームランで逆転すると、三回には打者一巡の猛攻で一挙 6 点を追加して、この時点でゲームは終了。結局、先発全員の 17 安打で大量 11 点を奪った読売が大勝し、優勝へのマジックを 30 とした。横浜はこれでいつものように四連敗。

  そんなわけで、やはりというかなんというか、予想通りの完敗である。それにしても無死満塁で一点も取れない打撃陣や、先発のホルトをはじめ中継ぎの稲森、森中と、どいつもこいつも面白いようにめった打ちにあうヘッポコ投手陣の情けなさには涙が出てくる。だが今日のところはそれもよしとしたい。なにせタダである。貰い物のチケットでの観戦である。自分の金で見たのならまだしも、ご招待の身分で大きなことはやはり言えまい。

  しかしだ。それでもこれだけは、この一言だけは言っておきたい。

  ばかやろう。


08月19日(月)
  昨晩は眠りが浅くて困った。うとうとと睡眠の淵に落ちかけるところまではいくものの、一気に覚醒レベルが上がってしまい、そこから先にどうしても落ちていかない。どこでも三秒で眠ることができる私にしては、こんなことはまったく珍しいことなのだが、やはりこれは昨日あんなことを書いてしまったからだろうか。無意識のうちに、寝坊→遅刻という敗者の方程式を妙に警戒してしまったようだ。心底小心者である。

  結局、朝方までそのまま深く眠ることなく、通常より二時間弱も早く起きだしてそのまま出社。当然遅刻どころか楽勝で間に合った。実力ではないものの(なんの実力だ)、三年連続の夏休み明け大遅刻はこうして阻止することができたわけだ。一応は進歩してますか私も。

  だがろくに寝ていないから、当然昼間眠くてしょうがない。ただでさえ頭は休み呆け気味なのに、強烈な眠気にまで襲われた日には全然仕事にならないのだった。しかたなく先日の出張旅費の精算など、とりあえずどうでも良い事務処理をこなして手先を動かし、大脳皮質に血が巡るのを待つ。昼過ぎになってようやく目が開いてきた感じだ。こんなことならやっぱり午後出社にすれば良かった。やはり進歩はない。


08月18日(日)
  本日で夏休みも終了である。まあ山に行ったりなんだりで、それ相応に「夏休み」ではあったのだが、今年は(も)結局日程の半分は出勤した。なので例年通りあまり休んだという気がしない。くそ。これが全部終わったら一ヶ月ぐらいまとめて休みを取ってやる。先日は一週間と言っとりましたが、都合により延長しました。

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  ということで、明日から通常勤務へ復帰だ。さあ明日からまたバリバリ働くぞ!と心にもないことを書いてみる私だが、そういえば思い返してみると、去年も一昨年も夏休み明け初日はいきなり遅刻し、仕方なく半日休暇にしたのだった。図らずも明日は台風接近の様子。たぶん今年もダメだろう。それならいっそのこと、最初から午後出勤にするべきか。

  空には鉛色の雲が張り付いているものの、台風接近のためか気温が低く、湿り気を帯びながらもそよぐ風はどことなしか軽い。もう夏も終わりですね。


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